03 なぜうつ病の障害年金は難しいのか?
03 なぜうつ病の障害年金は難しいのか?

うつ病で障害年金を受けたいのですが、自分で手続きできますか?
この質問、過去に50回は受けたと思います。
その質問に対する答えてしては、
「手続きするだけなら何とかできると思いますよ」
というのが私の答えです。
障害年金は国が定める年金制度の一つで、受け取るための要件も決まっています。
なので、要件を満たしている人が正しく手続きすれば障害年金は受け取れるはずなのです。
ネットの掲示板なんかにも、
”障害年金は自分で手続きできる、
社労士に依頼するなんてお金の無駄だ”
なんてことが書かれていたりします。
実際に障害年金の手続きを自分でできる人はいますし、年金を受け取っている人も数多くいます。
でも、審査に通らず障害年金が不支給となってしまったといううつ病患者も数多くいるのです。
なぜうつ病での障害年金はこんなにも難しいのでしょうか?
その理由は三つあります。
【理由①】うつ病の障害年金は、認定基準が曖昧だから

障害年金は、病気やケガの種類ごとに認定基準が定められています。
例えば、眼の障害の場合、両眼の矯正視力の和が0.04以下のものは1級になります。
耳の障害の場合、両耳の聴力レベルが100デシベル以上のものは1級になります。
どちらも数値による基準があって分かりやすいですよね。
一方、うつ病の場合の判定基準は次のようになります。
日常生活に著しい制限を受ける:2級
労働が制限を受ける:3級
すごく曖昧ですよね。
つまり、うつ病の場合は役所のさじ加減で本来2級の人を3級に、3級の人を不支給にすることも簡単にできるのです。
おそらくあなたは、
「なぜ役所がそんなことをするの?」
と思ったかもしれません。
しかし、役所には障害年金を支給したくない理由があるのです。
厚生労働省の発表によると、年金の給付額は国民年金が19兆円、厚生年金が26兆円の計45兆円となります。

一方、保険料収入は国民年金が1.6兆円、厚生年金が23兆円の計24.6兆円しかありません。
足りない分は国の税金や過去の積立金を取り崩してまかなっているのです。
現在進行形で進んでいる少子高齢化を考えると、今後も年金財政が悪化していくことは明らかです。
どうにかして年金の支出額を抑える必要があるため、うつ病の障害年金が狙われたのです。
このように、うつ病の障害年金は認定基準がとても曖昧で、役所にとって都合の良い判断を下しやすいことが障害年金を受け取ることを難しくしている理由の一つなのです。
【理由②】うつ病の症状でまともに動けないから

これがうつ病で障害年金の手続きが難しい一番の理由です。
そもそも、あなたはうつ病に苦しめられていて働くこともできない状態です。
不眠・意欲低下・焦燥感・食欲不振・不安・イライラ・希死念慮・幻聴・対人恐怖・趣味や関心の喪失、といった症状に悩まされているはずです。
何に対しても意欲が低下し、理解力や行動力も低下し、人と話をすることさえおっくうになっています。
そんな状態で、
①年金事務所に行って自分の状態を適切に説明できますか?
②専門用語を使ってくる職員の話を理解できますか?
③数多くある申請書類を完璧に作ることができますか?
この三つの質問すべてに
「はい」
と答えられる人は少ないでしょう。
自分で動くことができないほどうつ病の症状が重いからこそ障害年金の対象になっているとも言えるのです。
実際に年金事務所の職員もこう言っていました。
あの難しい障害年金の書類を完璧に用意できるなら、
その人のうつ病は軽いと思ってしまう
これがうつ病による障害年金の難しさなんです。
また、障害年金の書類作成も非常に難しいです。
厳密にいうと、役所が受理する程度の書類であれば難しくありません。
書類に表示されている記載事項を埋めればよいだけです。
でも、”役所が受理する書類”と”審査に通る書類”というのはまったく別物です。
作成した書類の中身がイマイチだと、受理されたところでダメなんです。
「審査の結果、
あなたは障害年金の対象になりませんでした。」
役所にこう判断されて、あなたは納得できますか?
私が障害年金のサポートをするときに、お客さんが事前に作成したという申立書を見ることがあります。
しかしそのほぼ全ての書類が、必要な情報が書かれていなかったり余計なことが書かれていて審査にマイナスになると判断できる書類だったのです。
ただでさえうつ病で行動するのが難しくなっているのに、やっとの思いで書き上げた書類が審査に落ちるものだったら報われないじゃないですか。
そういう意味でも、うつ病の人が自分で障害年金の手続きをするのは難しいんです。
【理由③】診断書を書く医師は障害年金の専門知識はないから

うつ病の相談に親身にのってくれ、治療方針や薬を処方してくれる医師は頼りになる存在です。
でも、医師は病気や治療の専門家ですが、障害年金についても専門知識も実務経験もありません。
そして、障害年金の手続きには医師が作成する診断書が必要なのですが、普段の問診では診断書作成に必要な情報は把握できないのです。
これだけだと分かりにくいと思いますので、少し説明させてください。
うつ病で障害年金を受け取るためには、
”日常生活にどの程度支障が出ているか”
というのがとても大切です。
とくに、食事・入浴・着替え・掃除・買物・服薬・対人関係・危機対応・社会性、といったことが重要です。
一方、普段の医師の問診では、食事は食べれているか・眠れているか
といった程度は聞きますが、あまり日常生活の深い話はありません。
私が障害年金の受給代行をするときにお客さんから日常生活の詳細をヒアリングするのですが、医師に正しく情報を伝えられていた人はほぼいませんでした。
100人に1人くらいは伝えられているかも、といった感じです。
このように、日常生活の実情を医師が知らないまま診断書を書くとどうなると思いますか?
そう、想像で診断書を書いちゃうんです。
実際には問診にきているときの患者の状態などをみて診断書を書いていますので、完全に想像で日常生活の評価を行うわけではありません。
でも、本当に調子が悪い時って病院にも行けませんよね。
体調が悪くて病院に行けず、予定を変更してもらうことや病院に連絡もできずに通院できないことだってあったはずです。
病院に行けているという時点である程度ましな状態なのです。
ということは、多少ましな状態を基準にして診断書を書かれてしまうのです。
そうなると、軽く書かれてしまう可能性が高いということが、あなたにも分かるはずです。
なので、医師に診断書を依頼するときには、審査に通るためにも日常生活の状況も正しく伝えておかなければならないのです。
でも日常生活の状況といっても具体的に何をどう伝えればよいか分からないはずです。
一方、障害年金を専門にしている社会保険労務士の場合、医師が正しい診断書を書きやすくするための資料を作ってくれる場合があります。
この点だけをとっても、うつ病での障害年金の手続きを自分でするのは難しく、専門の社会保険労務士を頼った方が良いといえるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
うつ病での障害年金の手続きは自分で行うこともできますが、
①認定基準が曖昧
②うつ病で動くことが難しい
③医師が正しい診断書を書けるとは限らない
という理由から、自分で手続きするのは難しいという話をしました。
あなたが障害年金の手続きをするときには、自分で手続きするか、それとも専門の社労士に任せるか。
じっくりと考えてから行動してください。



